Scribble at 2024-01-31 08:09:59 Last modified: 2024-01-31 09:26:26

添付画像

デザイン分野の専門家からも、今回の変更を前向きに捉える向きがある。東京都内のデザイン会社に勤める女性デザイナーは「過去のデザインに固執せず、アップデートすることは大切。時代とともに変わっていくことが自然な気がする」と指摘。ただ、「刷新するなら名前の変更まで考えてもよい気がする。〝坊〟という字は男の子を想起させており、1人を女の子のキャラクターする変更があってもよかった」と注文を加えた。

「受け入れられない」「時代とともに変わるのが自然」…ヤン坊マー坊新デザインに賛否

これもメディア・リテラシーの話題にはなる。上の箇所でも「デザイン分野の専門家」などと紹介してるけど、「東京都内のデザイン会社に勤める女性デザイナー」って、それ「専門家」である保証になってないよね。ウェブ制作会社とか DTP 会社にいる Adobe 製品のオペレータなんて、デザインの専門家どころかデザイナーですらないんだから。つまり、何かの専門家と言ってても、その基準は国家資格とか、あるいはしかるべき権威をもつ専門家たち自身が考える基準での専門性を担保できるということではなく、まるっきり産経新聞の記者の錯覚あるいは未熟な知識による思い込みにすぎない可能性がある。

そして、保守系のメディアというのは、フェミニストなど左派とされることが多い人々、とりわけ女性の関心を買うために、自分たちがどうでもいいと思ってる話題については、こうして男女平等っぽい話を取り上げて見識があるかのようなポーズをとることが多いんだよね。ともあれ、(地域というだけでなく時代という点でもグローバル・スケールの)保守思想から見たインチキ右翼を叩く話は、これくらいにしておこう。たかが HP 30 くらいのスライムにダメージ 200 のイオナズンを連続で放つようなものだ。

さて、僕は「デザイン分野の専門家」とやらではないが、企業で自社の会社案内や名刺といった印刷物からウェブサイトの設計とかビジュアル要素を手掛けている、それなりに基準を満たしていると思うプロの「デザイナー」として意見を言わせてもらうと、ここで登場する(ありていに言って、実在するかどうかも怪しい)デザイナーのコメントには二つの疑問がある。もちろん、正否は一概に決められないにしても、デザイナーであればみんな上のような意見をもつかと言えば、そうではないということを指摘するために、敢えて別の意見を紹介しておく。

まず「過去のデザインに固執せず、アップデートすることは大切。時代とともに変わっていくことが自然な気がする」というのは、本人がそう言っているように、個人としてそういう気がするだけであって、ただの錯覚という可能性もある。過去のデザインに何の理由もなく拘泥する必要はないとしても、逆に何の正当な理由もなくデザインを変更する必要だってないからだ。このたびの話題で僕は少し驚いたのだが、これまでに8回もキャラクターのデザインを変更していることは気づかなかった。というか、僕は昭和43年生まれなので、キャラクターの履歴を示した図で分かるように、僕は三代目のキャラクターしか印象がないため、それから後に6回もキャラクターが変更されていたこと自体を知らなかった。そもそも、このキャラクターが登場する CM だとか、あるいは典型的な事例ではヤンマーが提供する天気予報の番組を何十年も観ていないので、気づくわけがないのである。そういう人間からすれば、この3代目のキャラクターから、いま話題になっている SF っぽいキャラクターに替わるとなると、やはり違和感が強い。キャラクターのデザインを変更するにしても、そういう事情で眺める人もいるのだという点を忘れてしまうと、アイデンティティの連続性が失われてしまう。それはつまりブランドとして通用しなくなり、キャラクターを表示するだけでは何のことなのか相手に通じなくなる(これはヤンマーの「ヤン坊、マー坊です」とキャプションを常に付けないといけなくなる)というリスクがある。ただ、既に僕の記憶とはかけ離れたキャラクターに変わってしまって久しいので、替えることについてはどうこう言いたくない。僕は、どういうキャラに替わろうと、たぶん現行のキャラですら「ヤン坊、マー坊です」と言われなければぜんぜん分からないだろう(かろうじて昔のキャラは洋服の "Y" と "M" がヒントになるが、今回のキャラの服装だとアルファベットの形状だというゲシュタルトすら気づきにくい)。

そして次に、「〝坊〟という字は男の子を想起させており、1人を女の子のキャラクターする変更があってもよかった」(sic、産経新聞の記者だと知らないかもしれないが、いちど意味を調べてみるといい)などと、わざわざ女性のデザイナーにコメントさせるという体裁でフェミニストにリップ・サービスでもしているつもりなのかもしれないが、これにも殆ど合理性がない。仕事を常に男女でやるとか、仕事を担うのが無条件に男女で同比率になっていなければ差別的である、などというのは、実は LGBTQ も含めたダイバーシティの観点を支持するなら、逆にそういう発想こそが gender binary という差別であろう。本当に性やジェンダーを印象付けないようなキャラクター・デザインを採用して、何らかのイデオロギーなり主張を表現することがヤンマーの brand equity を高めると思っているなら、それこそ両方のキャラクターを中性的にデザインするように薦めるのが、都内のインチキ左翼が大好きな意識高い系のコメントというものだ。ヤンマーから、そういう趣旨でデザインしてくれと依頼されたデザイナーであったら、実際にそういうデザインを提案するだろう。自分が仕事を受けたわけでもないという気楽なスタンスで適当なことを言うから、こうやって簡単に異議を挟まれるのだ。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook