Scribble at 2021-06-30 10:07:59 Last modified: unmodified

蚊取り線香を使う時期となった。僕は殆ど蚊にさされないのだが、寝ているときに「ぷぅーん」とか「かぁー」と音がするのは煩わしい。また、連れは僕よりもかなり蚊にさされる。加えて、うちの窓には網戸がないため、まだエアコンを使っていない時期は寝ているときに窓を開けていると、いくらでも蚊や蜂やハエやスズメ(これは餌を催促しに入ってくるようだ)が入ってくるというわけだ。

だいたい、夕方になると連れが蚊取り線香に火を点けている。これで、連れがいる部屋と隣の小さな寝室までカバーするらしく、おおよそ朝まで快適に過ごせる。たまに、蚊取り線香が燃え尽きたからか、寝室で蚊の羽音を聞くことがあるため、僕が深夜に改めて蚊取り線香を炊くとこもある。これを暫く続けているのだが、最近は冬にも蚊が部屋の中を弱々しく飛んでいることがあるため、そういうときは秘拳菩薩掌で仕留めるか、必殺キンチョールで仕留めるのが習いとなった。

それはそうと、改めて調べてみたら、蚊取り線香は予想以上に強烈な煙を出すらしい。そこで少し調べてみると、こういうページがあった。

「蚊取り線香の害は人体にある?妊婦・胎児・子ども・高齢者への影響は?【プロ監修】」

https://taskle.jp/media/articles/654

わざわざ「プロ監修」などと書いているので、それ以外は WELQ 並みに学生や主婦バイトがコピペで作ったデタラメな「自称メディア」なのだろう。こういうクズどものページは、専門家が監修したページを掲載していたとしても、基本的に信用しないことが賢明に生きていくための知恵というものである。上記のページもそういう無視してよいページである。「プロ」と書かれているように、記事を監修しているのは「医学博士」らしいが、こんなハッタリは冷静に考える人には(学歴にかかわらず)通用しない。既に多くの人が愛知県知事の偽装リコール署名活動に関わっていたと考える高須克弥も「医学博士」だし、新型コロナウイルスやワクチンについてデタラメをバラ撒いている武田邦彦も「工学博士」である。つまり、学位をもってるかどうかと知性や品性は関係ないのだ。そして、この記事を監修している「医学博士」の経歴を眺めたらすぐに分かるとおり、「殺虫剤メーカー勤務を経て、2001年富山医科薬科大学大学院医学系研究科博士後期課程修了」と書かれているため、要するに蚊取り線香などの殺虫剤を製造・販売している側の人物なのだ。自分の手掛けた商品が「危険」だなどと最初から言うわけないのである。また、正確に読むと分かることだが、この人物は経歴の最後が大学院を修了したことだけであるから、要するに現職が分からない。再び殺虫剤メーカーに復職したのか、それとも大学で研究者をやっているのか、これだけでは「プロ」なのかどうかは本当のところ分からないのである。最近の自称メディア運営サービスは、「専門家」だの「プロ」だのと書いておけばクズみたいな記事でも違法性が阻却されるかのような実務がはびこっているので、注意したい。

こうした製品の安全性については、よくある誤魔化しや詭弁にも注意したい。安全志向というか偏執的な性分で、「ロハス」といった宣伝用語(何かエコロジーのような環境思想に似たものと誤解している人が日本には多いようだが、実は生活にかかわる「思想」でも何でもなく学問的な根拠も全くない、アメリカの社会学者が考え出したキャッチ・フレーズもしくはマーケティング用語である)に踊らされやすい人が騙されるフレーズに、「天然由来」というものがある。冷静に考えれば子供でも分かる話だが、この世界にある毒だとか危険な生物、気象、地形のほとんどは、すべて「天然」なのだ。人が工場で製造する過程に放出されたり生成される有害物質や、商品を消費するときに生成されたり体内に取り込まれて消化されて出てくる有害物質などと比べても、その影響力や有害性や規模において劣るわけでも何でもない。そもそも人類の文明や叡智は「天然」の事象に抗うこともあり、医療や建築はその最たるものだろう。

一例として、蚊取り線香にはピレトリンという物質が使われている。これについて安全性を尋ねる質問に、こう答えている事例があった。

「ピレトリンは天然成分です。そして、今ではピレトリンに似たピレスロイドが使われており、それは石油合成された殺虫成分で、より強力な殺虫作用があります」

https://realestate.yahoo.co.jp/knowledge/chiebukuro/detail/10177226825/

そもそも、誰が答えているのかもわからない、よりにもよって Yahoo! 知恵袋なんていう「インフォメーション・ゴミ屑」と言うべき素人や嘘つきの掃き溜めで、何か〈正しい〉ことを知りうると考えてしまうこと自体が愚かというほかにないが(いっとき情報セキュリティ関連の著名人が、馬鹿げた回答に対する「是正活動」をやっていたりしたが、もうさすがに止めてしまったらしい)、ともかく検索すれば残念ながら結果の上位に上がってくるため、取り上げざるをえない。もちろん、「天然成分です」と書いたところで安全である保証などにならないのは自明であるし、そもそも「今ではピレトリンに似たピレスロイドが使われており」などと別の物質の話に擦り替えていて、そちらの「ピレスロイド」が安全かどうかの証拠は何も書かれていない。これでは、大学受験で白紙を回答用紙として提出しているのと同じである。

正確に言えば、ピレスロイドという物質には「選択毒性」という特性があって、哺乳類や鳥類には毒性がなく、体内に入ってもすぐに分解・排出されてしまうため、残留して何らかの影響をもつこともないという結果が出ているから、殺虫剤に使えるのである。他の例で言えば、大多数のヒトは玉ねぎを食べても支障はないが、犬や猫には有害である。これらのペットを「家族同然」などと言い立てては、毎年のように愛玩動物へ玉ねぎの入った料理を与えて殺してしまう自称愛犬家や自称猫マニアが絶えないのも、こうした「天然成分」のはたらく作用を知らないからだ。(最も、僕のように吉野家の牛丼に入っている玉ねぎしか積極的に食べられない人間もいて、連れには気の毒な話である。)

ただ、蚊取り線香の煙そのものは PM 2.5 に比べても室内の空気を高い濃度で汚染するため、空調はしっかりやらないといけない。

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