Scribble at 2024-04-05 14:06:37 Last modified: unmodified

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"arrow keys" by RokerHRO

Happy Hacking Keyboard Professional 2 を使い始めてから6年ほどになる。それまでは10年以上に渡って Happy Hacking Keyboard Lite2 を、自宅と職場で愛用してきた。もちろん職場でも自費で買ったキーボードを置いていたのだが、正直なところ自費で仕事の道具をホイホイと買い揃えられるほどの給料をもらっているとは思っていないので、やはりエンジニアとしての仕事道具であるからには会社に支給してもらいたいということで、稟議を出して購入してもらったというわけである。もちろん、accordingly な価値というものを、何らかの結果として出すべきでもあろう。それは承知しているし、この6年間に2万円ほどのキーボードに買い替えただけの成果は上げていると思う。通常の1,000円や3,000円くらいのキーボードと比べて、仮に減価償却が5年だとすると、その5年間でどれほどの差があるのか。もちろんだが、正確なことは分からない。これまでだって Lite2 という安いモデルの HHK を使っていたのだから、急に3倍の価格のキーボードに替えたからといって、仕事が3倍もこなせるとか受注できるというわけでもないからだ。

それに、こうして6年ほど使ってくると、やはり矢印キーがないモデルというのはタイプ・ミスが非常に多い。矢印キーならカーソルを動かすにあたって間違えることも少ないし、そもそも打ち間違えてもカーソルが別の場所へ動くだけだから、リスクも少ない。これに対して、[, ', /, ; キーを Fn キーと一緒に使う方式だと、打ち間違えが酷い結果になることもある。たとえば、←(左)に相当する ;(コロン)ではなく、間違えて左隣りの l(エル)を叩いてしまうと、これはページ・スクロールにマッピングされているので、画面全体がいきなり動いてしまい、入力している箇所だけでなくカーソルそのものも見失ってしまう場合がある。あるいは、→(右)に相当する '(一重引用符)ではなく、打ち間違えて右隣の Enter に触れてしまった際のリスクは、言うまでもないだろう。

そもそも、プロダクト・デザインの原則として、一つの UI に設定する機能は、コンテクストが一致しない限り少ない方がいいとされる。コンテクストが一致していれば機能が複数あってもいいという事例は、たとえばトグル・スイッチのようなものだ。キーボードで言えば、CapsLock が該当するだろう。こういうものは、押下するという一つのアクションでも On / Off を切り替えるという同一のコンテクストの機能が実行されるので、混乱が少ないから許容される。したがって、コンテクストが異なる無関係の、つまりは独立した機能を一つの UI に集約することは原則違反と言って良い。よくあるのが、ボタン状の UI をタップすると或る機能(写真を撮影したり、ファイルを実行したりする)が実行され、長押しすると全く別の機能(たとえば設定画面が出るとか)が実行されるというやつだ。ああしたものは、どれほど分かっていても、いざという時に混乱しやすい UI 設計であり、よろしくないとされる。Windows のエクスプローラで、ファイルをシングル・クリックで選択してから、ダブル・クリックで実行するような挙動がディフォールトになっているのは、多くの初心者を怖がらせないための設定であるが、そもそも GUI のファイル・マネージャなんか使うから、そういう混乱が生じやすいのである。

というわけで、僕はやはり矢印キーは独立していた方がいいと感じるようになった。もちろんだが、矢印キーを使うからといって、古参というだけで UI も何も分かっていない一部のロートルどもが口にするような「UNIX 使いとしての堕落」になどなるわけがないし、そもそもそんな自意識でコンピュータを使ったりソフトウェア・エンジニアリングやセキュリティに携わっている時点で、何十年のキャリアがあろうと、それは無能の自己宣伝みたいなものである。要は少ないリスクで成果を上げることが、職業軍人としてのエンジニアの使命であり、自意識なんてどうでもよい。UNIX 使いでないなら、ないでいい。それがどうしたというのか。成果が上げられれば、サラリーマンとしては「勝ち」であろう。

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