Scribble at 2021-10-11 10:18:19 Last modified: unmodified

仕事で使うファイルやフォルダの整理というのは、何か体系的な知見があるようでないし、具体的なアドバイスもあるようでない。個々人の経験談はブログ記事や SNS の投稿、コメントに数多く見つかるものの、それらのほぼ全ては情報デザイン、あるいはビジネス・プロセスの妥当性という観点などまるで考慮していない素人談義だ。パソコンやスマートフォンやタブレット、つまりは個人として利用しているコンピュータと名の付く機器を使っている状況では誰にでも当てはまる課題でありながら、その基本的な考え方やテクニックが何もまとめられたり集積していないというのは、非常に不思議でもあるし、僕には困ったことだと思えるのだが(世界中で非効率なことをやっている損失を考えよ)、こういうことは個人の自由なり見識であり、プライベートなことだと思い込んでいる人があまりにも多いらしく、なかなか学術研究者ですら話題にはしたがらないらしい。確かに、粉飾決済の二重帳簿に使う Excel ファイルから始まって、アダルト動画やアイドルのスケベな写真をどのフォルダへ入れるかが多くの人々の関心事であれば、そうもなろう。しかし、世の中にある「ファイル」というものは、そういう後ろめたい動機かプライベートな目的で使うだけのものではあるまい。

このような場合に参考としたいのは、まず昔ながらの「ファイリング」という知見だ。これについては、一般社団法人日本経営協会が「ファイリング・デザイナー検定」という資格試験を主催している。ただ、資格試験用テキストの目次を眺めると、情報設計や整理というよりも、媒体によらない情報というもののライフ・サイクル全般を扱っていて、「トータル・ファイリング・システム」なる体系立った知見に思える名前の考えも具体的な内容は分からない。調べてみると、壷阪龍哉「『卜一タル・ファイリングシステム』の推進スタッフを養成する」(『情報の科学と技術』, 第48巻7号 (1998), 414-417)という論説はあるが、はっきり言って雲を掴むようなことしか書いておらず、これでは紙や電子媒体の単なるライフ・サイクルを〈誰かが管理している〉体裁を「システム」と呼んでいるにすぎない。社会科学には散見されることだが、物事の状況に名前を付けただけの些事を、真の学術的な業績にあたる新しくて妥当な理解の枠組みというレベルの reification だと勘違いする人がいるので、困ったことである。

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