Scribble at 2024-04-15 18:19:46 Last modified: 2024-04-16 07:50:01

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アメリカ南部の夢: ニューサウスの政治・経済・文化 (有斐閣選書 132)

やや古い本だが、アメリカの南部について書かれた本は興味があるので、たまに古本として手に入れたり、図書館で借りて読んでいる。もちろん、黒人差別だけに関心を持っているというわけではないし、南部の貧しい白人についてだけ関心を持っているわけでもなく、やはり基本的なテーマは国や時代に関係なく差別というものに関心をもっているのだけれど、敢えて海外の事情をテーマにすることで、自分の体験とか近辺の事情(大阪に住んでいて差別と何の関わりもなく育ったり暮らすのは、旧華族でも難しい)とは、いちおう地理的・空間的には直接の関係がないところで考えられるという利点があると思う。もちろん、それは同時に「黒人差別はとりあえず関係ない」と思いこんだり、あるいは自分が学んだり見知った特定の地域や時代の事情を普遍化・一般化してしまう欠点にもなりえるわけだが、そうしたリスクを承知していることで、いくらか思い込みは免れよう。

ということで、このような本も読んでいるわけだが、繰り返すように1987年の本であるから、黒人の連邦下院議員すら誕生していない頃の話であり、ましてやオバマ大統領など想像の外ですらある頃の本である。そういう点を差し引いて読む必要がある。ただ、こういう本には過去に活動した色々な人々の細かい事績が紹介されていることがあって、サラ・パットン・ボイルにしても、この本で初めて知った人物である。こういうことを伝えてくれるだけでも読む価値はあろうかと思う。

ただ、統計を振り回すだけで南部だの黒人差別だのを語るような論説も含まれており、そういうものは現代においても同じことだが、筆者の分析能力がないと何の価値もない文章となる。歴史的な出来事なり人物の事績を紹介してくれたら、分析能力が乏しくても情報なり資料としての価値は残るが、まるっきり統計の数字だけを根拠に民主党が共和党がという話しかしておらず、しかもその分析が的外れで稚拙なものであれば、もう読む必要を感じない・・・という第2章を書いたのは誰だろう? ・・・国立国会図書館の調査役人か。これでは南部のアメリカ人に会ったことすらなかろう。

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