Scribble at 2024-04-24 11:41:26 Last modified: 2024-04-24 12:01:17

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僕が初めてアマゾンを利用したのは、購入履歴によれば2002年6月14日であった。初めて買ったのは Colin Moock, ActionScript : The Definitive Guide (O'Reilly) で、5,000円ほどだった。もちろん、最初は洋書を買うことだけが目的であり、そしてクレジット・カードを作らないでいたため、代引きやコンビニエンス・ストアでの先払いができるというのが魅力だった。これに対して、いまでもそうだが紀伊國屋など国内の洋書販売会社は為替レートに手数料などを追加した販売レードが非常に高くて、だいたいアマゾンで手に入れる価格の倍くらいの値段がしていたから、決済方法だけではなく価格という点でもアマゾン以外の EC 書店サイトは論外だったわけである。それから20年ほどが経過して、四桁とは言わないまでも確実に三桁の後半に達する冊数をアマゾンで購入してきた。これは、どう考えてもアマゾンがなければ難しいことだったのだから、この点ではアマゾンを使ってきた良かったとは思う。他にも、トルコの替刃だとか、書籍の他にもアマゾンでしか手軽に注文できなかった商品は多々ある。

でも、こうして20年ほどを思い返すと、国内で出版された新刊の書籍や雑誌については、実店舗(ジュンク堂や文教堂、あるいは近所の書店)で購入した割合が圧倒的に多い。これは、僕が国内で出版された書籍を購入して読むという経緯を考えたら、おおよそ当然だろうなと自分でも納得している。そして、それゆえに実店舗の書店はなくなると困るのだ。

僕は、新刊の邦書、つまり日本で出版された書籍を買うときは、たいてい具体的にこれを読もうという目標がない。つまり、この本を読みたいと思って日本語で書かれた本を書店で買うなんてことは殆どない。分野とかジャンルとか、あるいはこういう話題について書かれた本はないものかというテーマを絞って本を探すことはあるが、たいていは書店で好き勝手に色々な店を見て回って、単純に「面白そう」な本を買うのだ。ぜいたくな話ではある。しかし、僕は研究目的だと殆ど洋書しか読まないので、もともと日本語の本を読むことは、それだけで贅沢であり暇潰しの一種なのだ。正直、哲学であろうと日本人の書いた本で読むべきものなんて、そうそうない。(実は洋書でも同じようなものだが)わざわざ買って丁寧に通読し、なんなら読み返すために蔵書として置いておくほどの本なんて、10年に1冊もあれば良いほうだ。

逆に、洋書は決め打ちである。こんな感じの本を買おうなんていう雑な目的で洋書を買うなんてことは殆ど無い。なので、最初から読むべきものが決まっているので、アマゾンで安く、そして検索すればすぐに見つかる本を買うのである。こういう、本の読み方や買い方というスタイルがぜんぜん違うため、アマゾンで洋書を気楽に眺めて買うなんてことはないし(そもそも、何度も書いているように、アマゾンの洋書にはそれを許さない大量のインチキなメモ帳や SUDOKU 本や graph paper が山のように出品されていて、気楽なブラウジングなんてやっていられない)、逆にジュンク堂で特定の本を買うなんてことも滅多にない。そして、どちらのスタイルであろうと、本を手に入れて読むということには変わりがないので、どちらもスタイルも続けたいと思っている。実店舗の書店がなくなると、暇な時に立ち寄って漠然と眺めるというスタイルが通用しなくなるので、これは暇潰しできなくなるという些末な理由でも困るし、それ以外にも、実は自分で気づかない興味や関心に気づくというチャンスが失われるという理由でも困るのである。

こういうチャンスに期待して書店を訪れ、そして本を買うというのは、もちろん繰り返すが贅沢なことだ。しかし、こういう贅沢は可能な限り貧乏な人にも保障されてしかるべきである。人が万能でも完全でもない以上、自分の視野とか想定を超える何かに接するのは、多くの場合に有効でもある。これは、たとえば大学の「教養課程」というもので、理学部の学生でも古典文学を履修したり、社会学の学生でも線形代数の授業を履修できるようになっているのは、俗に言われるような「教養を高める」なんていう、大学の側から与えられる分かったような分からないような理屈ではなく、学ぶ側から言えば、自分が何を無視したり知らないかに気づくチャンスだからなのだ。アマゾンは、「欲しい本」がどこにあるかは教えてくれる。しかし、アマゾンは「自分が何を欲しいか」を教えてはくれないのである。

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