Scribble at 2024-06-29 08:08:56 Last modified: 2024-06-29 22:12:39

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近畿の東大合格校ランク 灘、西大和が圧倒、地元志向強くも北野、堀川など公立も健闘

この手の記事が、昔から先入観や偏見を茶飲み話でじわじわと醸成する愚劣な「情報」であることは間違いないのだけれど、もちろん或る種のマーケティングが目的でかような調査に協力する学校が多いために、依存としてネタになり続けているらしい。

もちろん、回答が嘘でない限り灘高校が何人というのは事実なのだろう。でも、それは「近畿」の実態の一部でしかないし、もう少し言えばこういう話題に関心を持つ人々が本当に知りたい「学校の格」みたいなものともさほど関連性がなかったりする。つまりは、このような限られた情報によるランキングというのは、回答した学校の一部しか語っていない(もちろん東大合格者だけがその高校のパフォーマンスではないし、東大に進学した者だけがその高校の「まともな卒業者」というわけでもあるまい。教師や理事会がどう思ってるかは知らんがね)し、教育とか受験というものの実勢を正確に語っているわけでもないのである。

たとえば、僕の母校(大阪教育大学附属高等学校天王寺後者)が最近の実績でどうなのかは知らないが、少なくとも姉妹校である池田校舎から東大合格者がいないわけがないので、これは上記のようなページとか、このページが元にしたソースを調査した会社の取材に、池田校舎が回答していないという予想が立つ。ただの数字は個人データではないけれど、やはりあからさまに進学校であることをいたずらにアピールすると、昨今は東大生の7割ていどが年収数千万円の家庭の子息であるとも言われており、要するにいらぬトラブル(実際、池田校舎は小学校に暴漢が乱入して多くの生徒が殺されたという事件に見舞われた)に巻き込まれるおそれがあるという懸念もあろう。

他にも、最近は大学受験で内申書を提出しなくてもよい大学が多いため、そもそも学校が生徒の進路を把握していない場合もある。もちろんだが、同窓といった、たかだか3年間や6年間の人間関係を理由にして、後からあれこれと関わりを持たれると困ると考える親もいるからだ。これは特にうちの高校でも旧家、元華族、官僚、巨大企業の創業家などについては、進路についてみだりに口外しないという方針の「イエ」もある。

それから、通俗的には大学受験と言えば東大を頂点とする単純なピラミッド形状を思い浮かべる人も多いわけだが、これは僕が PHILSCI.INFO でも書いているようにミスリードなイラストや図解や視覚的コンセプトの乱用である。東大が国内の大学受験において、偏差値という観点での最高峰に属することに異論はないが、上記のような短絡的なランキングには登場しにくい最高峰に類する山というものがあって、その代表が医大である。そして、具体的には僕の母校の卒業生は昔から半分くらいが医大に進学する傾向があるため、東大の理IIIや阪大や慶応の医学部に進学できるとしても敢えて医大に進むわけである。上記の記事は近畿圏の話題になっているが、こういう実情は他の地域なり都道府県にもあって、もし地元の医大へ進学する生徒がみんな東大や京大を受験していれば、こういうランキングの内容はかなり違った結果になるだろう。

ただ、出てきた結果だけを見ている限り、高校野球のように「強豪校」みたいなものが出ては消えてゆくというシーンを眺める暇潰しにはなるのだろう。たとえば、僕らが高校生だった40年くらい前なら、奈良県の有名な進学校と言えば東大寺学園が知られていたわけだが、最近の実績を伝える上の記事では、王子駅から少し離れたところにある西大和学園が多くの東大合格者を出しており、東大寺学園が単に調査へ回答していないだけなのか、それとも東大合格者がゼロなのかは分からないが、少なくとも奈良県には新しい「強豪校」があるという事実は分かる。でも、それはそれだけのことだ。

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