Scribble at 2017-07-06 17:15:51 Last modified: 2022-09-21 10:28:37

松下さんであれ稲盛さんであれホリエモンであれ、あるいはジャック・ウェルチであれ、経営者が書く経営書の類は、もちろん経営学では暇つぶしの読み物にもならないノイズと断定されている。そして、その理由はとてもクリアだ。つまり、「経営者が本当のことを全て書けるわけがない」ことを、経営学のプロパーは知ってるからなのだ。まず経営学では理論を学ぶ、そして彼ら経営者が実際にやってきたとされることをケーススタディとして参照してゆく。しかし、現実の経営や成果を参照するのは、実は松下幸之助の経営哲学を理論に応用するためではない。そんなことはできないし、それをやってよいと言えるだけの(本当の記録や)証拠など、パナソニックや親族から集められるわけもないからだ。また、彼らの語っていることが何らかの嘘っぱちであるとしても、経営者が実際の経営との関りで、どういう条件があればどういう類の嘘を書くのかというパターンを引き出すこともできるが、そういうシニカルな研究は認知科学がやればいいのであって、経営学者は経営の現実のデータや精緻な理論を磨くことに集中するべきであろう。

したがって、僕は rvws.work というドメインまでとって経営書や経済学の詳細で厳密なレビューを書いてみたいとは思っていたのだが、はっきり言って有名な経営者が書いた経営哲学の類は、一読するくらいの値打ちはあっても、やはり学術や社会思想のレベルにおいては取るに足らないものだとしか思えない。もちろん、僕は書いた本人の前で「こんなものは素人の結果論か、あるいは美化 200% の自画像にすぎない」と悪態をつくほど無礼ではないにしても、経営者ごとき経営(学)の素人が書いたものを闇雲にありがたがるほど愚かではない。

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