2017年12月30日11時41分 に初出の投稿

Last modified: 2017-12-30 11:41:32

イノベーションを阻害する決まり文句

僕は崎村さんというのは敬愛する人物の一人ではあるのだけど、ポジショントークとして言わざるを得ない立場として書いてるのか、それとも本心で書いてるのか理解に苦しむことを書くことがあると思っている。この文章なんかもそうで、いまどき「イノベーション」なんてものが若造の知的想像力の話とは殆ど関係のないものだってことは、経営コンサルディングの会社にいれば分かってるはずだけど、こういう社会科学的にナイーブなことを書いてしまうのは、NRI 内部に向けた文章なんだろうかと思わざるをえない。

僕は、昔から「イノベーション」と称して脱法行為を正当化しようとする IT 技術者やベンチャーの理屈に常に反対してきた「抵抗勢力」を自認していて、それこそ既得権益の権化のようにガキのプログラマの諸君からは写っていると思う。しかし、崎村さんが描いているような「説得する相手」だとは思っていない。僕は起業家に説得して欲しくはないのだ。なぜなら、現行法において脱法行為や違法行為は端的に脱法であり違法なのだから、説得など無意味だからである。もしそれらの行為を脱法的だとか違法だと処断されたくなければ、自分達を批判する相手を説得するよりも先に法律を変えるのが筋だろう。

僕が闇雲に「イノベーション」なんていう空語を振り回す連中に抵抗しているのは、そういう連中の大半が常に違法行為や脱法行為でしかイノベーションを起こせないと思い込んでるからなのだ。脱法・違法行為でしか世の中をよくできないなどと言うのは、簡単に言えばテロリストだろう。などと書くと、即座に「では現行の法律が常に『正義』だと思っているのか。そういう正義とか違法という二元論的な構図を脱構築・・・」とかなんとか、ポモの二番煎じみたい理屈をひねり出す人もいるとは思うが、1980年代のニューアカブームと併走してきた、しかも哲学者に向かって真顔で言えるようなことかどうか、少しは考えてからにしてもらいたいものだ。

ということで、僕が IT 技術者や起業家を叩き伏せようとするのは、それを既存のルールの中で凌駕する成果を上げてこそ「イノベーション」だと思うからだ。ポケモン GO で本当に世の中が 0.1mm でも「善く」なると思うなら、どうぞやってみろと言っているだけである。なぜなら、現行の法律はともかく起業家の足かせになると思い込んでいるのかもしれないが、実は彼らに何も規制などかかってはいない。何を、ありもしない抑圧の話をしてるのか。VR のアダルトゲームを開発したり発売するにあたって、現行法や条例の他に何の規制が特別に開発会社やプログラマーにかかっているというのか。CCC が素人図書館を運営するにあたって、「お前達だから特別なルールを設ける」などと言われたのか? そんなものはありはしない。適法な仕組みでビジネスや運用を設計したり、結果を出していないからこそ、こうした事業者は批判されているだけなのだ。彼らのやっていることがイノベーションかどうかなんて、そんなことはどうでもよいのである。

したがって、規制そのものを目の敵にして、それさえなくなればビジネスや開発がうまくいくかのような議論は全くの欺瞞である。同情でシステム開発やビジネスなど成立しない。そして、成果が出ない(あるいは多くの人から批判を受ける結果になった)サービスの事業者は決まって、二言目には「わたしたちは場を提供してるだけです」とか何とか、上場した手帳屋の爺さん(最近ではクリスマスツリーのイカサマイベントで有名)みたいなことを言い出すわけだ。そして、上記の文章だけだと、崎村さんのような取り巻きのコンサルも含めて、「始動因」としてのイノベーションだけを確保すればいいんだということになってしまい、結果にはコミットしなくてもいい(それどころか何のためにやってるかという目的因すら無視していい)という、きわめて卑怯な議論ということになる。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Google+ Twitter Facebook